従業員のいない個人事業者が税理士に報酬を払ったら・・・源泉徴収は必要?

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1. 源泉徴収義務

事業を開始するとサラリーマンのときとは違う義務が生じます。

その一つが「源泉徴収義務」というものです。

他人に給与を払う場合、弁護士・税理士等に報酬を支払う場合、デザイナーにデザインの報酬を支払う場合などに生ずる義務です。

「源泉徴収義務」の仕組みとは・・・

相手に支払う報酬から、一定の金額を控除して支払います。

その控除した金額を税務署に支払うことになっています。

給与をもらっていたときに、税金を引かれていたのをイメージしていただくとわかりやすいですね。

 

さて、この「源泉徴収義務」・・・事業を開始した方すべてが負うのでしょうか?

 

 

2. 源泉徴収義務者となる者

 

2-1. 給与を支払う者

居住者に対し国内において給与等の支払いをする者は、その支払いの際に所得税を徴収することになっています。

よって、給与を支払う者は、源泉徴収義務者となります。

因みに法人の場合は、従業員がいなくても代表者に役員報酬として報酬(給与等に該当)を支払います。

結果、給与を支払う者になりますから、源泉徴収義務者となりますね。

例外として、家事使用人(家政婦さんなど)2人以下に給与を支払う場合は「源泉徴収義務者」になりません。

 

2-2. 報酬等を支払う者

居住者に対し国内において一定の報酬などを支払いをする者は、その支払いの際に所得税を徴収することになっています。

これは、弁護士・税理士・建築士などの士業、原稿料・デザイン報酬など限定列挙されています。(所得税法204条1項)

これらの者に報酬を支払う場合には、源泉徴収義務者となります。

 

ただし、これら報酬を支払う者でも 上記2-1の給与を支払う者でない場合は除外されます。

すなわち、2-1.により源泉徴収義務者でない者は、報酬等を支払っても所得税を預かる必要はない ということです。(所得税法204条2項2号)

これにも例外があり、ホステスさん等に支払う報酬については取扱いが違いますのでご注意を!!

 

 

3. まとめ

 

3-1. 従業員のいない個人事業者が税理士に報酬を払ったら・・・源泉徴収は必要?

結論として、給与を支払う者は「源泉徴収義務者」となり、弁護士・税理士等に報酬を支払った場合にも所得税を徴収しなければなりません。

表題の答えは、給与を支払っていない者は、弁護士・税理士等に報酬等を支払っても所得税を預かる必要はありません

これは、結構専門家でも、相手が「事業者」だったら所得税を預かる。と勘違いしている方がいます。

そのような場合、優しく教えてあげてくださいね。

 

3-2. 給与から預かる所得税がない場合

では、パートさんを雇っていて給与を支払っているが毎月5万円くらいで所得税を預かる必要がないのだけど・・・

この場合弁護士・税理士等へ報酬を支払った場合どうなるのか?

弁護士・税理士等への報酬について、所得税を預かる必要があります。

給与等を支払っている場合には、その給与から預かる所得税の有無を問わず2-1.の源泉徴収義務者になりますので注意が必要です。

 

3-3. 相手からの請求に源泉徴収額の記載がなかったら?

もうひとつ注意点です。

実務で見ていると源泉徴収が必要な士業からの請求書には、「源泉徴収欄」があることが多いです。

例えば 

① 請求額   ② 源泉所得税  ③ 消費税額 ④ 振込金額 (①-②+③)
 10,000円  1,024円  800円  9,776円

といった具合です。

これなら、所得税を預かるのか!! とわかりますね。

しかし、請求書に 

請求額  消費税額   請求額合計
 10,000円  800円  10,800円

とだけ記載されている場合でも、相手方が源泉徴収の対象となる業種であれば、所得税を預かる必要があります。

請求書に源泉徴収額を書いていなかったから所得税を預からなかった!! 

と主張しても預かる義務があるのは支払う側ですので通用しません。(結構多いトラブルの一つです。)

 

3-4. 最後になりましたが、大前提

最後に、これが大前提なのですが・・・

所得税を預かるのは、相手方が個人である場合だけです。

相手が法人である場合には、その相手が対象となる事業でも預かる必要はありません。

もちろん、支払側は、法人個人問わず上記の通り判定することになります。

 

 

 

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