1. 相続税の増税
相続税増税の話が話題になってからというもの相続税対策についての質問が多くなってきました。 特に「年間110万円までの贈与は非課税なんでしょ?」 という質問。
まさにその通りです。 贈与税には、暦年で110万円までの基礎控除があります。ある人Aが暦年で贈与を受ける金額が110万円以下であれば贈与税は課税されないこととなります。
しかし、この「贈与」について実際に相続があった時に税務上大きな問題となることがあるのです。
「贈与」の意味について考えてみます。
2. 贈与とは
2-1. お互いの合意が必要
まずは、「贈与」とはなんぞや?というところに問題があります。 贈与・・・何かをタダであげること という意味であることは誰もが納得できるとおもいます。 しかし、これだけではないのですね。
物をあげる人が「あげるよ」といい、もらう人が「もらうね」といわないと成立しません。 もらう人の意思も大切な条件なのです。
よく聞く話が、親が子供名義の通帳をつくり年110万円を入金していたという話。 それを子供が知らない場合、贈与したとは認められません。 相続が発生した時は親の財産とされてしまいます。 その話をすると・・・たいてい・・・ なるほど、では子供にそういう預金があることを言っておけば大丈夫なのね!! とかえされます。 でも「はい」とは言えません。
2-2. 管理しているのは誰?
「贈与」というのはお互いの合意により財産をタダで移すことです。 もらった方は制約なくその財産を利用できなければいけません。 つまり、子供名義の通帳を作ってそれに110万円入金したのであれば それを子供が自由に利用できる状態にあって初めて贈与と言えるのです。 その子供名義の通帳・その印鑑・カードなどを子供に渡してこそ贈与と言えます。 これが大原則になります。
3. まとめ
ここまでの説明をすると結構多くの方が渋い顔をされます。 相続税対策で子供・孫に贈与するのに、なぜか子供・孫に好き勝手に使われてしまうのは嫌なのですね。 どうも、万が一の時のために使わないでいてほしいようです。
お気持ちはわかるのですが、ここは子供・孫を信用するしかありません。 そんなのバレないんじゃない?などと税理士の私に言ってくる方もいます。 ・・・そういう問題ではありません・・・ 実際にそれが相続税の調査において相当問題になっています。
メディアなどで「110万円まで非課税」というのがクローズアップされ一人歩きしてしまっている感があります。
年間110万円までの贈与は非課税であることをうまく使えば長期的に有効な相続税対策となるのは事実です。 しかし、やり方を間違えると痛い目にも会う可能性がありますので十分な注意が必要です。