平成28年分 年末調整のポイント
今年も年末調整を行う時期がやってまいりました。
年末調整は、給与の支払をうけるサラリーマン等一人一人について、毎月の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続です。
年末調整の手続きは昨年と何ら変わることはありませんので、改正点に注意して正しく計算しましょう。
最近は、給与ソフト・年末調整ソフトといったソフトを利用する方が多いと思います。
はじめる前には、ソフトが更新されているかどうか確認してから作業をはじめましょう。
平成28年分年末調整を行うにあたっての注意点
1. 通勤手当の非課税限度額
平成28年度の税制改正により、給与所得者に支給する通勤手当の非課税限度額が引き上げられました。この改正は、平成28年1月1日以後に支払われるべき通勤手当について適用されます。
なお、平成27年12月31日以前に支払われるべき通勤手当の差額として追加支給するものについては適用されませんので注意が必要です。
改正後の1か月あたりの非課税限度額
区 分 | 課税されない金額 | |
改正前 | 改正後 | |
@ 交通機関又は有料道路を利用している人に支給する通勤手当 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額 最高限度150,000円 |
1か月当たりの合理的な運賃等の額 最高限度100,000円 |
A 自動車や自転車などの交通用具を使用している人に支給する通勤手当 | 改正なし(下記参照) | |
B 交通機関を利用している人に支給する通勤用定期乗車券 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額 最高限度150,000円 |
1か月当たりの合理的な運賃等の額 最高限度100,000円 |
C 交通機関又は有料道路を利用するほか、交通用具も使用している人に支給する通勤手当や通勤用定期乗車券 | 1か月当たりの合理的な運賃等の額とAの金額との合計額 最高限度150,000円 |
1か月当たりの合理的な運賃等の額とAの金額との合計額 最高限度100,000円 |
【参考】Aの場合の非課税限度額
通勤距離(片道) | 1カ月の非課税限度額 | |
2q未満 | 全額課税 | |
2q以上10q未満 | 4,200円 | |
10q以上15q未満 | 7,100円 | |
15q以上25q未満 | 12,900円 | |
25q以上35q未満 | 18,700円 | |
35q以上45q未満 | 24,400円 | |
45q以上55q未満 | 28,000円 | |
55q以上 | 31,600円 |
平成28年4月に改正されましたが、遡及して平成28年1月からの適用となっています。
すなわち、1月〜3月までの間に支払われた給与等に含まれる課税対象の通勤手当のうち、新たに非課税となる金額を再計算し精算する必要があります。なお、その再計算の計算根拠について記録、保存が必要です。
2. 国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合の改正
給与等の源泉徴収において、非居住者である親族に係る扶養控除・配偶者控除又は障害者控除(以下「扶養控除等」)の適用を受ける場合には、親族関係書類(※1)を提出又は提示しなければなりません。
給与等の年末調整において、非居住者である親族に係る扶養控除等の適用を受ける場合には、親族関係書類(※1)及び送金関係書類(※2)を提出又は提示しなければなりません。
平成28年1月1日以後に支払われるべき給与等について適用されます。
※1 親族関係書類
次の@又はAのいずれかの書類で、その非居住者がその居住者(給与所得者)の親族であることを証するものをいいます。
@ 戸籍の附票の写しその他の国又は地方公共団体が発行した書類及びその親族の旅券(パスポート)の写し
A 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(その親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
※2 送金関係書類
次の書類で、その居住者(給与所得者)がその非居住者である親族の生活費又は教育費に充てるための支払を、必要の都度、各人に行ったことを明らかにするものをいいます。
@ 金融機関の書類又はその写しで、その金融機関が行う為替取引によりその居住者(給与所得者)からその親族に支払をしたことを明らかにする書類
A いわゆるクレジットカード発行会社の書類又はその写しで、そのクレジットカード発行会社が交付したカードを提示してその親族が商品等を購入したこと等及びその商品等の購入等の代金に相当する額をその居住者(給与所得者)から受領したことを明らかにする書類
なお、親族関係書類及び送金関係書類が外国語により作成されている場合には、日本語に訳して提出又は提示する必要があります。
3. 年末調整関係書類にかかるマイナンバーの記載を不要とする見直し
マイナンバー制度が導入され、平成28年1月以降の税務書類等にその運用が開始されています。
給与等の支払者に対して提出する年末調整関係書類のうち次に掲げる申告書については、平成28年4月1日以後に提出するものからマイナンバーの記載が不要とされました。
1. 給与所得者の保険料控除申告書
2. 給与所得者の配偶者特別控除申告書
3. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等控除申告書
年末調整の仕方
年末調整の手続がスムーズに行われるためには、年税額計算のための準備を十分行っているかにかかっています。
すなわち、従業員の皆さんから提出してもらう年末調整に必要な申告書とその添付書類が会社が決めたスケジュールの期限までにそろっていることが重要です。
スケジュール*1 | 期限(法定期限) | 使用する書類*3 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
11月 | 年末調整に必要な書類の準備 | 各申告書の配布*2 回収・チェック |
||||
12月 | 年末調整の処理 | 「源泉徴収簿」 | ||||
給与と徴収税額の集計 | ||||||
給与所得控除額の計算 | 「平成28年の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」 | |||||
所得控除額の計算 | 「扶養控除等(異動)申告書」 「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」 保険料控除証明書等 |
|||||
年税額の計算 | 「住宅借入金等特別控除申告書」 金融機関等の残高証明書 |
|||||
1月 | 源泉徴収票の交付 | 10日 or 20日 |
源泉所得税(徴収税額)の納付 | |||
31日 | 支払調書及び法定調書合計表の提出(税務署) | |||||
給与支払報告書(総括表)の提出(市区町村) |
『平成28年分 年末調整のしかた』が便利です。
上記冊子は税務署でもらえます。あるいは国税庁ホームページに掲載されています。
平成29年に向けての注意点
1. 源泉所得税額の改正
平成29年分の所得税の計算において、給与収入1,000万円超の場合の給与所得控除額は220万円が上限となりました。
平成29年1月1日以後に支払うべき給与等の源泉徴収の際には、『平成29年分 源泉徴収税額表』を使用してください。
給与ソフトを使用する際は、更新の有無を確認の上ご利用されることをお勧めします。
2. 扶養控除(異動)申告書等に記載するマイナンバーに関する改正
平成29年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等について、給与等の支払者に対して次に掲げる申告書の提出をする場合において、その給与等の支払者が一定の事項を記載した帳簿(※)を備えているときは、その申告する者はその申告書にマイナンバーの記載を要しないこととされます。
1. 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
2. 従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
3. 退職所得の受給に関する申告書
4. 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
(※)申告書に記載すべき提出者本人、控除対象配偶者、扶養親族等のマイナンバーその他の事項を前年以前の上記申告書の提出を受けて作成された帳簿
<平成28年10月27日更新>